東京高等裁判所 昭和41年(う)1786号 判決 1966年10月25日
主文
本件控訴を棄却する。
理由
<前略>
一、本件「自治労新潟」は全国自治団体労働組合新潟県本部(以下自治労県本部と略称する)の発行する同労働組合の機関紙であり、公職選挙法第一四八条第三項の要件を具備する新聞紙であることはこれを認め得るところである。然しながら、公職選挙法第一四八条第三項の要件を具備する新聞紙といえども、新聞紙等の販売を業とする者が、通常の販売方法以外の方法でこれを多数人に頒布するときは、同条第二項の適用がなく、同法第一四二条に違反するものと解するところ、原判決挙示の証拠、就中、被告人の検察官に対する各供述調書、被告人の原審公廷の供述、押収にかかる「自治労新潟」号外(昭和四一年押第七八一号の一、九ないし二二)の外、原審証人志苫裕の証言によると、組合機関紙「自治労新潟」は組合費を納入する自治労県本部組合員に対しては無料でこれを頒布し、同組合員以外には一部金二円で頒布するものであり、いずれにも各単位組合宛郵送するのが原則であるところ、本件被告人が頒布した相手方は、いずれも非組合員であり、且つ、契約購読者でもないのみならず、被告人は原判示の如き記事内容を有する「自治労新潟」を、郵送の方法によらず、各町村役場にオルグ活動に赴いた際、候補者山崎昇、同武内五郎の当選を得る目的で携帯し、無料でこれを配布したことが認められる。されば、たとえ、被告人が右新聞紙の販売業者である自治労県本部のため、これを配布したとしてもそれは公職選挙法第一四八条第二項所定の通常の方法による頒布ということはできないから、原判決が被告人の本件頒布行為に対し同法第一四二条第一項違反を以て問擬したのは正当であり、論旨は理由がない。<以下略>(石井文治 目黒太郎 渡辺達夫)